【作成途中】1931年シュナイダートロフィーレースの英国高速機に関する技術報告集(Collected Reports in British High Speed Aircraft for the 1931 Schneider Trophy Contest) より、R.J.ミッチェル著「出場機体について」 非公式翻訳
出場機体について
R.J. Mitchell
Supermarine Aviation Works (Vickers), Ltd.
※本記事は作成途中です(2022/02/20現在)。暇になったらポチポチするのを随時更新する形で進めます。終わるのだろうか...
1931年のシュナイダートロフィーコンテストに参加する最終判断は同年初頭まで下されなかった。大会参戦が決定された直後に、新たに2機の水上機の製造依頼がSupermarine Aviation Works (Vickers), Ltd.に言い渡された。設計から製造まで約6か月しかなく、完全に新規の設計から機体を作り上げるのは不可能であったため、1929年大会参戦機体S.6の設計を活用し、残された短い時間で機体やエンジンの効率を可能な限り引き上げることでより高い性能を得ることにした。
1929年大会の後にルールが変わったことで堪航性の試験がレースの直前に実施されることになった。コース全長に変更がなかったため、この追加された飛行時間分の燃料を新たに搭載しなければならなかった。
これと同時に、エンジン製造業者は400馬力ほどの出力増加を約束しており、ひょっとするとそれ以上の増加が見込める可能性も伝えていた。
以上から新たなフロートはエンジンや燃料・オイルタンク、冷却器とラジエータの重量が増加されたことによる荷重増加と、これらによる必然的なエンジン出力増加と、最終的に1929年機体よりも19%増えている計画上のS.6Bの機体重量である6250 lb.に対応しなければならないことが明らかであり、これを前提に詳細な研究開発が始まった。
本機の設計における数々の要素は極めて相互に依存しており、他の要素や部品を頻繁に参照せずにある部品を説明するのは困難であるが、機体の説明を大まかな章に分けて行う。
概要6Bは張り線を有する低翼単葉の主翼に、片持ち式の尾翼を有する双フロート型水上機であり、ステンレス鋼製の艤装品以外はジュラルミン製であった。機体の側面、正面からの写真がそれぞれFig.1と2で示されている。
寸法及び主要な詳細仕様
全長 28 ft. 10 in.
胴体全長 25 ft. 3 in.
フロート長 24 ft. 0 in.
フロート間距離 7 ft. 6 in.
フロート幅 2 ft. 8 in.
フロート高さ 2 ft. 8 in.
予備浮力
左舷フロート 80%
右舷フロート 39%
主翼幅 30 ft. 0 in.
主翼弦長 5 ft. 8 in.
尾翼幅 8 ft. 1.5 in.
全高 12 ft. 3 in.
総重量(大会時) 6,086 lb.
空虚重量 4,590 lb.
主翼面積 145 sq. ft.
翼断面 R.A.F. 27
翼荷重 44 lb./sq. ft.
垂直尾翼安定板面積 15.8 sq. ft.
昇降舵面積 6.0 sq. ft.
水平尾翼安定板面積 6.0 sq. ft.
方向舵面積 7.5 sq. ft.
エンジン Rolls Royce R
出力 2,200 B.H.P.
出力荷重比 2.89
S.6A 寸法及び主要な詳細仕様
全長 28 ft. 8 in.
胴体全長 25 ft. 3 in.
フロート長 22 ft. 0 in.
フロート間距離 7 ft. 6 in.
フロート幅 2 ft. 8 in.
フロート高さ 2 ft. 8 in.
予備浮力
左舷フロート 72%
右舷フロート 39%
主翼幅 30 ft. 0 in.
主翼弦長 5 ft. 8 in.
尾翼幅 8 ft. 1.5 in.
全高 12 ft. 3 in.
総重量 5,771 lb.
空虚重量 4,471 lb.
主翼面積 145 sq. ft.
翼断面 R.A.F. 27
翼荷重 39.8 lb./sq. ft.
垂直尾翼安定板面積 15.8 sq. ft.
昇降舵面積 6.0 sq. ft.
水平尾翼安定板面積 6.0 sq. ft.
方向舵面積 7.75 sq. ft.
機体胴体
胴体はエンジンとパイロットをちょうど収容できる程度の大きさの断面を持つモノコック構造であり、フレーム幅もこれに合わせるように最小限の大きさになっている。フレームは6か7 in.程度の間隔で置かれたフランジ付きチャネルから成り、より強力なウェブ付きフレームがスタブスパーやエンジンマウント部に取り入られている(Fig.3参照)
エンジンのすぐ後方にバルクヘッドがあり、この下半分がアスベストで覆われているため、導管や操縦系統用の穴がバルクヘッドに開けられているにも関わらず、パイロットはエンジンの熱から比較的守られている。バルクヘッドの上半分は胴体に直接作りこまれているヘッダータンクの一面を構成しており、リベット接合された接合面にはシェラックが塗られたコルクがシーラントとして選ばれ、十分な密閉性能を誇った。
フレームや外板を安定させるために発動機架にインターコスタルが置かれたのを除いて、エンジンマウントが数少なく前後方向に延びる構造材である。外板は平均で16~18 S.W.G. (標準線番)の厚みを持ち、集中荷重が入る部位では2倍から3倍の厚みを持った。
オイルタンクとオイルクーラを兼ねていた尾翼は鋼製で、胴体と一体構造になっている。尾翼のリブは前縁に対して垂直方向に伸びており、小さなオイル溝が前縁に対して平行方向に伸びるように外板にリベット及び溶接で接合されていた。
オイルクーラ
オイルクーラは3つ搭載されており、2つはオイルラインの正圧側1つは負圧側に配置されている。正圧側のオイルクーラは機体胴体の側面に位置し、ほぼ胴体全体方向に伸びている。大まかな配置図をFig. 4に示す。負圧側のオイルクーラは胴体下面の中心線上に置かれ、構造部材を兼ねている。これらのオイルクーラは水ラジエータと同様の製作手法で作られているが、特に低温時のオイルの粘性を考慮して水ラジエータよりも広い流路断面が確保されている。
多くの研究開発を経て、オイルクーラのオイル流路はクーラ表面から内側方向に伸びるような銅製の波状の形となった。
主翼
主翼(Fig. 5)は従来の2本桁構造であり、9 1/2 in.間隔でリブが配置されている。エルロンと湾曲している翼端部を除いたすべての表面がラジエータで覆われており、リブにはすべて太く突出したフランジが付いており、そこにねじ穴を切ってラジエータを止めネジで締結している。桁は組み立て式のジュラルミン製であり、外側に伸びるフランジを持つ溝形(チャンネル)のウェブに、細長い板部材がリベット接合されることで桁のフランジを構成している。後桁は翼根部で結合されている胴体のバルクヘッドの角度に対応するように後退されている。
ワイヤーブレースはトラニオンで桁の外側にある金具に繋がれ、丸ネジで留められたワイヤーブレースの端部が主翼のカバー内に収まり、空気抵抗の大幅な削減につながった。
翼内ラジエーター
ラジエーター(図6)は24 S.W.G. (標準線番)厚さのジュラルミンを使用していた。標準の6x2サイズのシートメタルが活用され、外表面と内表面を形成するシートメタルはそれぞれ特殊なハトメ/アイレット金具で締結することで一定の間隔を維持していた。この外表面と内表面の間の水路は1/16 in. 幅しかなかった。
ラジエーター用のジュラルミンシートメタルが外側用・内側用まとめてハトメを留める穴あけ加工がされると、特殊なパンチ加工で穴の内側にフランジが作られる。加工後にシートメタルが再び重ねられると、このフランジが突き合わされ、ハトメとともに水密のシールとなる。その他の接合面全般のシールにはシェラックが塗られたコルクが使用された。